株式、債券、商品、為替・・・いかなる対象のトレーディングにおいても、その手法を大きく区別すれば、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析に二分される。
為替取引(FX)においては、どうしてもテクニカル分析を重視しがちであるが、ファンダメンタルズ分析にも重点を置いたトレーディングを松崎氏は勧めている。
外国為替市場の巨大な流動性
外国為替市場の1日の取引高は5兆ドル(約600兆円)にものぼる。東証一部の一日の売買代金が2~3兆円程度であることと考えれば、とてつもなく巨大な市場であることが分かる。
そのため、株における「仕手」のようにバリュエーションを無視して相場を曲げるようなことは不可能。これは、過去に日本が行ってきた円売り介入の結果を見ても明らかであり、政府や中央銀行であってもマーケットの大きな流れには逆らえないのだ。
マーケットの大きな流れに乗る
円相場については、円高トレンドが長期間続いていたが、自民党政権への交代と日銀の金融政策変更をきっかけにマーケットは一気に円安に傾いた。この流れに乗ったトレーダーは大きな利益を得たことだろう。
このマーケットの大きな流れに乗るためには、各国の金融政策や経済指標などを観察すること、すなわち、ファンダメンタルズ分析が重要になる。
二国間の力関係を考える
為替レートは二国間の比較により決まるため、強い通貨と弱い通貨の組み合わせを選ぶことが効率的なトレードを行うためのポイントとなる。
例えば、QEのテーパリングと今後の利上げを理由に米ドルを買う場合、相手通貨を円にするかユーロにするかポンドにするか・・・どの通貨が最も弱いかを考える必要がある。最も身近な通貨である円絡みの通貨ペアを選択しがちであるが、様々な通貨に目を向けることが大切ということだ。
本書では注目すべき経済指標とその見方を紹介
本書では政策金利をはじめとする各種経済指標やその他イベントについて、松崎氏が実践している見方が紹介されている。実際のチャートを関連づけて説明されているので、非常に分かりやすく参考になる。
また、ファンダメンタルズ分析を補完するためのテクニカル分析についても解説されている。松崎氏は3本のEMA(平滑移動平均線)を用いる「ベガス方式」により、ポジションをつくるタイミングを図っているとのことで、こちらも注目だ。
他のFX解説書とは一線を画す内容
FX解説書の多くはテクニカル分析の活用法に終始しがちだが、本書はファンダメンタルズ分析によるトレーディング手法を中心に解説しており、他の解説書とは一線を画す内容であると思われる。
多くのトレーダーに新たな視点を与えてくれる一冊であることは間違いないだろう。
なお、著者の松崎美子氏はブログやTwitterなどで積極的に情報発信を行っており、本書と合わせてチェックしたい。
ブログ:ロンドンFX
Twitter:Yoshiko Matsuzaki(@LondonFX_N20)さん
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