ドライ型加齢黄斑変性の治療薬候補エミクススタト塩酸塩の臨床試験結果が6月に発表されるとのことで、盛り上がっていたアキュセラ株。株価は7,000円を超え時価総額3,000億円にも迫る勢いでしたが、5月25日の後場に異変が・・・。
5/25:後場、株価は7,700円まで上昇したが・・・
アキュセラ5月25日1分足チャート。13:08を起点に突然大量の売り注文が現れ、13:55にはストップ安である5,790円に到達。
特段の下げ材料が見当たらない中での急落だったので、「これはチャンス」と6月の臨床試験結果発表を期待した買いを入れたトレーダーもたくさん居ることでしょう。
5/26:臨床試験結果についての情報が開示される
謎の急落の翌日7:30、まさかの臨床試験結果の公表。結果公表は6月だと思っていたホルダーはさぞかし驚いたことだろうと思います。しかし、本当に驚くべきなのはその内容でした・・・。
プラセボ群は年に1.69㎟の病変の進行があったのに対し、エミクススタト投与群は用量別に、10mgは年に1.84㎟、5mgは1.83㎟、2.5mgは1.69㎟の病変の進行があったことから、エミクススタト投与群とプラセボ群の萎縮病変の進行に差は認められず、主要評価項目を達成するには至りませんでした。24ヶ月目の通常の冷光下の最高矯正視力において、エミクススタト投与群とプラセボ群の間でベースライン(治験前)からの変化に有意差はありませんでした。
ドライ型加齢黄斑変性治療薬候補「エミクススタト塩酸塩」の臨床第 2b/3 相試験におけるトップラインデータについて (PDF)
まさかの有意差無し。
最も上市に近かったドライ型加齢黄斑変性治療薬がダメになったとすると、ホルダーが思い描いていた開発品収益化のスケジュールは水泡に帰すこととなります。そうすると次に上市が近いのは増殖糖尿病網膜症治療薬としての「エミクススタト塩酸塩」ということになりますが、これはまだ第2相試験が始まったばかり。ゴールまでの道のりは果てしなく遠い・・・。
当然、この日のアキュセラ相場は混乱。大量の失望売り注文が殺到しストップ安4,790円。670万株を超える売りに対して、売買が成立したのはわずか19,600株でした。
5/27:混乱収まらず2日連続のストップ安
当然、この日も混乱が収まることはなく、850万株の売り注文を残し取引終了となりました。
ところで、アキュセラの発行済株式総数は36,517,106株であり、窪田社長が28.1%、SBIグループが21.2%、共同開発契約を締結している大塚製薬グループが9.3%を保有しています。これら58.6%の株式はそう簡単には売却されないと考えられます(SBIグループは怪しいですがw)。浮動株は1,500万株程度。
つまり、浮動株の半分以上が一斉に売りに出されたということであり、この売り注文がとてつもないボリュームであることが分かります。
臨床試験結果発表前である5/25の急落はインサイダー取引か?
これまでの流れを見ると、25日の急落は「臨床試験の結果を事前に知った者による売りではないか?」という疑問が湧いてきます。この点、臨床試験結果公表からネット上の各所で「インサイダー取引ではないか」という指摘がされており、JPXもこのことを問題視して調査に着手したとのことです。
日本取引所グループが、眼疾患治療薬の開発を専門とするバイオベンチャーのアキュセラ・インク株式でインサイダー取引が行われた可能性があるとして、調査に着手したことが関係者への取材で分かった。
仮にインサイダー取引があったとして、それにアキュセラ社内部の者が直接関わっているとすれば、収益化計画のみならずガバナンスにも問題があるということになります。この点、今後の調査で明らかとなるでしょう。
アキュセラホルダーが集う掲示板は阿鼻叫喚
アキュセラ株についての掲示板は阿鼻叫喚。株トレードからの退場宣言、人生から退場宣言、アキュセラへの怒り、「自社株買いをしろ!」というバイオベンチャー株主にあるまじき理解不能な主張、社長やアキュセラ株を推奨していたSBIの北尾氏やウルフ村田氏への恨み節・・・とにかくものすごいことになっております。
余談ですが、Twitterなどに生息している「株の先生のようなことをやってる人」の美しい掌返しも見ることができました。
数日前
猫『アキュセラ高値更新!下値で売るな!気持ち強く!』↓
本日
猫『アキュセラはカス。リスク回避って何度もボク言いましたよね?』_人人人人人人人人人人_
> 猫アイコンは地雷 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ pic.twitter.com/CcXU0FIsp9— おけら@臆トレ4545ディーラー (@okera1127) 2016年5月26日
アキュセラ株は一体いくらで寄り付くのか?今後に注目
27日終値は4,090円なので週明け30日の制限値幅下限は3,390円。この日ザラバでの売買が成立しなければ、31日の値幅は2倍に拡大され制限値幅下限は1,990円に。
ちなみに、少し前にはジグソー・ブランジスタショックがありました(現在も軟調な展開)。両銘柄とも凄まじい下げ幅ですが、下落の過程で相当な量の売買が成立しているため、比較的容易く逃げることが可能でした。ところが、今回のアキュセラショックについては、全くと言って良いほど売買が成立していないため逃げるにも逃げられず、過去の出来事と照らし合わせてもトップクラスの悲惨さだと思われます。
まだまだ落ち着く気配が見られないアキュセラ株。最終的には一体どこまで下落するのか、今後に注目です。
[追記]5/30:3日連続ザラバ出来高無しのストップ安、制限値幅拡大へ・・・
30日も当然のようにザラバ出来高ゼロのストップ安。引けでの出来高は7,200株で、残った売り注文は約835万株。3日連続ザラバ出来高無しのストップ安でしたので31日の制限値幅は1,990~4,090ということに。
しかし、連続ストップ安にもかかわらず買い注文が全く増えないのは過去に見たことがありません。制限値幅が拡大されても寄り付かなかった例は過去に一度も無いと思いますので、明日のアキュセラ相場には特に注目です。
[追記]5/31:制限値幅拡大でもなおストップ安、前日比-41.3%の1,990円に・・・
制限値幅が拡大されたにもかかわらず、本日もストップ安でした。終値は前日比41.3%の1,990円。時価総額を考えるとまだ割高感が残るとは言え、この価格でも売買成立したのはわずか18,700株。制限値幅が拡大されてもなお寄り付かなかった初めての例となるでしょうか。
本日も寄らずのストップ安なので明日も制限値幅拡大措置が継続されることとなります。明日6月1日のストップ安価格は1,190円ということになりますが、果たして寄り付くのでしょうか。
[追記]6/1:まさかの制限値幅拡大2日目のストップ安、前日比-40.2%の1,190円に・・・
制限値幅拡大2日目にもかかわらず、またまたストップ安。終値は前日比-40.2%の1,190円。寄りつき直後は買い注文が150万株ほどあったはずなのですが、時間が経つにつれて買い注文は取り消され、最終的に売買が成立したのは80,200株・・・。
本日もザラバ出来高ゼロだったので、明日の制限値幅は590~1,490ということに・・・。さすがに明日は寄り付くと思いますが、590円で寄り付いたとすると、高値である7,700円から92.3%下落することになります。
果たして明日のアキュセラ株の行方は・・・。
[追記]6/2:制限値幅拡大3日目にしてついに寄り付く。始値1,100円、終値は1,175円でした。
制限値幅拡大3日目にしてついに寄り付きました。始値1,100円、高値1,400円、安値1,014円、終値は1,175円でした。短期トレーダーの鉄火場として注目されたこともあり、出来高は驚きの43,306,100株(発行済株式総数の118%!!)。
高値7,700円を基準にすると、なんと7営業日でわずか7分の1の株価に・・・。アキュセラ株保有者のほとんどが大損を被るという株式市場近年稀に見る大惨事となりました。
市場が過熱しすぎるとどうなるか・・・後世のためにアキュセラ株のチャートを記録しておくこととします。
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